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不易流行・パラダイムシフト

2022.10.25理事長

『不易流行』という言葉があります。これは俳聖「松尾芭蕉」が俳諧の極意書である『去来抄』で「不易を知らざれば基立ちがたく、流行知らざれば風新たにならず。」と記したことから始まります。物事には状況に応じて臨機応変に変えるべきもの(流行)と、決して変えてはならないもの(不易)があるという意味です。


ところで、現在はパラダイムシフトの時代だと言われています。


パラダイムシフトの時代、つまり今までの枠組み、仕組みが変革され、常識そのものが逆転する時代を表すそうです。確かに今、医療においても今まで模範とされてきた枠組み仕組みが変革してきている気がします。つまり「今まではこうしてきた」と自分の常識に固持しているようでは、世の変革に取り残されてしまうような気がします。


「金」「物」に大きな価値観を求め、それが当たり前の時代が限界点を超え、物質より「こころ」を大切にするようなパラダイムシト。


しかし、このパラダイムシフトの時代だからこそ、日頃自分の内に一本の筋を通すことが重要となってくると思います。「筋」とは、「精神の指標」つまり各々の人が持つ価値判断ではないでしょうか。私たちは、日常それぞれの立場で判断・決断を迫られています。そして自分の判断基準に合わせて良い悪いを判断しているはずです。この判断基準をどこにおくかが重要なのではないでしょうか。


さて、私が院所に医療法人桒原翠縁会ハート小児歯科クリニックと名付けた理由をご説明しなくてはなりません。私の祖父、父はともに内科医をしておりました。そして、二人からは常々患者さんに対する思いやりの心を持つことを諭されて参りました。それを自分流に解釈し医療に必要な3H(THREE-H)と表現し、大切にしておりました。


一番目の「H」は「HAND」、医療技術を意味します。勿論、医療を施すためには技術が必要なことは言うまでもありません。しかし、いくら素晴らしい技術を備えていても、正確な診断の上に立脚していなければ良い医療とはいえません。この「診断」が二番目の「H」である「HEAD」です。でも、これだけで十分でしょうか。いくら正しい診断をして正しい治療を行っても患者さんを思いやる温かい心がなくては、患者さんの本当の喜びにはつながらないのではないでしょうか。この一番大切な三番目の「H]つまり「HEART」を院所の名前に是非したいと思いました。


世の中がパラダイムシフトをし、いくら変革をしようとも本質そのものは変わりようがないと信じています。この不易である「HEART」「こころ」の大切さを判断基準、精神の指標として医療に関わることが出来ればと考えております。


新しく設立した医療法人桒原翠縁会「善院」はその不易を基として子ども達の総合的なケアが出来る施設であり、未来を担う子ども達の、そして子どもを取り巻く者たちの心強い味方になると信じています。